キミの隣り




卒業式は感動の渦で終わりを告げた


そして今は学校のグラウンド



ここでみんなと別れを告げ



学校の門をくぐれば




これから私達は別々の道を歩いていく行く




でも、その前に






私にはやり残したことがある







一歩、一歩






大切なキミが待つ






場所へ





私は歩いて行く





桜の木の下で待っているキミ





今すぐにでも





キミに触れたい





キミに抱きしめられたい






そんなことを思ってしまう私








でも、それぐらいに








キミが好きなんだよ







キミとの距離は、





あと







3メートル






キミは私に気付いて顔を上げてくれた






私の大好きな笑顔






ねぇ?






もうその笑顔




誰にも見せないでね?






「おっせーよ」



いつもと変わらない意地悪な言い方



でも、そんな言い方も





愛しいと感じてしまう



「ごめんね」




今日ぐらいは素直にならなきゃね




「珍しい。咲妃が素直だなんて…
ま、いいや。咲妃、さっきの返事下さい」


真剣な顔をして私を見てくるキミ





本当にこの思いは伝えていいの?





消さなくていいんだよね?






言ってからやっぱり
ダメなんて言わないでね?




私は多分






一生分の勇気を使うんだから。






すーっと息をして





真っ直ぐキミを見る






暖かい春風が私達を包み込んだ




私のこの想いも風のように






今、キミに伝えるね







「悠、私も… 私も悠が好き。
悠が大好きです。だからこれからも…
悠の隣りにいさせて下さい」


「当たり前。俺こそ咲妃が隣りにいないと
もう無理だから。離れんじゃねーぞ?
咲妃…大好き。すっげー好き。
これからもずっと俺の隣りにいて下さい」





涙が溢れた





「ずっと… ずっと… 悠の隣りにいる…」




あと、少し





「悠、大好き」





言えた




やっとキミに言えた








涙が邪魔してキミの顔が見れない






今、キミはどんな顔をしてる?





そう考えた瞬間






キミの大きな手が私の顔を包みこんだ







大きくて温かい手




キミのぬくもりが伝わってくる






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