キミとワタシ。
春
時はすぎて、春。
まだ馴れない真新しい制服に包まれて少し幼い顔をした新入生が中庭を楽しそうに歩いている。
そんな風景を廊下の窓から眺めていた。
あれから、ユウタを何回も見かけた
意識していないつもりが気づくとワタシの視界のなかにいて、でも目が合うことは一度もなかった。
なんだろう、このもどかしい気持ちは。
「千鶴!」
ワタシは声が聞こえた方へ振り向いた。
「また~ボケッとしてる。」
ボケッとする事は悪いのかな?とワタシは首を傾げた。
「あ、別に駄目とは言ってないからね!ただフラッと何処かに行くからびっくりするの。」
何か理由が繋がっていない気がするのはワタシだけだろうか。
「千鶴、教室戻る?」
その問に左右に首をふった。
「んじゃあ、保健室?」
コクンと縦に頷くと楓ちゃんは少し悲しそうに笑ってそっかと言った。
「お昼一緒に食べようね!」
楓ちゃんは本当に優しい子だ。
ワタシは楓ちゃんがダイスキだ。