特上男子
女子の群れがざわつき始めた。


女子たちの興奮した様子を見ていると、悲鳴に似た叫び声がここまで聞こえてきそうだ。



「あっ!!智輝ッッ!!」



レンズの向こう側に見える智輝は、公園で会った彼とは別人みたいだ。


笑ってるけど、営業スマイルって感じ。


そんな事を思いながら見ていたら、群がる女子達が何やらおとなしくなり智輝から距離を取り始めた。


何事かと思いきや、女の人が智輝の横に並び歩き始めた。


遠く離れた場所から双眼鏡越しで見ているはずなのに、凄く綺麗な人だと直ぐに分かった。



「志保?どうしたの?」

「…………」



急に静かになり固まっている私を不思議に思ったのか、凛子に肩を揺さぶられる。


そんな凛子に応える余裕がなかった。



「ちょっと貸して」



私の手から双眼鏡を奪った凛子が私が見ていた場所を一生懸命見ている。


まだあの人が彼女だって決まったわけやない。


やけど何やろう……この気持ちが沈んでいく感じ。


そうか……関係はどうであれ、ほんのわずかな時間で分かったからだ。


智輝とあの女性が親しい間柄なんやって…………。






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