特上男子
「はい」

「…………」



凛子が双眼鏡を返してきたけど受け取れなかった。


笑っちゃうくらい体に力が入らない。



「いいの?見えなくなっちゃうよ?」

「…………うん」



大げさなくらい深いため息をついた凛子が双眼鏡を私の膝の上にのせた。



「綺麗な人だったね。智輝と並んでても劣らないくらい背も高くてスラッとしてて、モデルみたいな人だった」

「……そうやね」

「でも彼女か分かんないじゃない」

「親しそうな雰囲気やった」



智輝の隣にいた女性はにこりとも笑わんやった。


笑顔どころか寧ろ少し怖かった。


やけどそんな氷の女王に見せた智輝の笑顔は、営業スマイルでも、公園で私に見せてくれた笑顔とも違った。


自然で、飾りのないありのままの笑顔。



「今日の夕方空いてる?」

「空いとるけど……」

「遥(ハルカ)がご飯食べ行こうってさ」

「……分かった」






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