特上男子
「どさくさに紛れて何してんの?」

『おいッッ変な言い掛かりはよしてくれッッ』

「たいした演技。言い訳なら警察にどうぞ」



人でぎゅうぎゅうな電車の中でスーツを着たおじさんの腕を女性がひねり上げていた。


誰かが助けてくれると思ってなかったし、まさかそれが氷の女王様だなんて夢にも思わなかった。


おじさんと目が合い体を強張らせると、おじさんは真っ赤な顔をして怒鳴り散らした。



『お前がそんな短いスカートを履いているから勘違いされたんだッッ!!これで俺は会社もクビになって家族も失うッッ全部お前のせいだ!!』



なっ何やそれッッ!!


言い返したいのに上手く言葉が出てこなくて、私は目に涙を溜めたままおじさんを睨み付けた。


すると氷の女王様はさらにおじさんの腕をひねり上げ、低く突き刺さるような声でこう言った。



「ふざけた事ぬかしてんな。スカートが短かろうが長かろうが痴漢はする方が悪いに決まってんでしょ。周りから白い目で見られながら惨めに反省しな」



女王様の迫力におじさんだけじゃなく周りの乗客も息をのんだ。


私はそんな女王様に思わず見とれてしまった。






< 28 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop