年上の彼氏。
3
「なんか、意外ですね」
しみじみと料理を窺う先生。
あたしは何が意外なのか分からず、首を傾げる。
「いや、なんかお嬢様っていったら毎日豪華なフランス料理とか食べてそうなイメージだったので…」
あたしはその言葉を聞いてもしかしたら、そっちの方が良かったかなぁと不安になった。
「すみません…他の人はシェフの人が作るんですけど、あたしの場合は自炊なので豪華なのは作れないんです」
あたしは情けなさでいっぱいになる。
だけど、そんなあたしに先生は
「それって、とても偉いことですよ。それに、俺はこっちの方が好きですから」
満面の笑みで料理に箸をつけながら言った。
「お味の方はどうですか?」
料理を口に運んだ先生に問いかけた。
すると、先生は一瞬目を見開いた。あたしはそれと同時に息を飲んだ。
「うわ…!何これ…」
「お、お口に合いませんでしたか!?」
あたしは慌てて先生に聞いた。
「とても美味しいです」
先生が笑顔でそう言ってくれたので、あたしも自然と顔が綻んだ。
「いやぁ、これ程手がこんだ料理を食べるのは久しぶりです」
すると、先生はしみじみと料理を口に運んだ。
どことなく、寂しそうに話す先生を見たあたしは思わず、身を乗り出して
「こんなもので良ければいくらでも作りますよ!」
と、必死になって先生に言った。
先生は最初は驚いた顔をしたけど次第に優しい微笑みをかえしてくれた。
あたしは急に恥ずかしくなって、身を縮めた。
その後は何気ない話で盛り上がって、あっという間に2人とも料理を平らげてしまった。
「「ごちそうさまでした」」
2人で手を合わせて、食器をキッチンに運んだ。
「あ、食器は私が洗っておくので…!」
先に食器を洗おうとする先生を慌てて止める。
「いや、そんなことまで気を遣わなくて大丈夫ですよ?」
「いえ、私がやりたいだけですから」
洗い場の前に立ち、笑顔でそう言う私に先生も渋々了承した。