契約の婚約者
１．同類
シンと静まり返ったマンションの一室に携帯の鳴り響く音がする。


ベッド脇に置いたスマホを手にとり着信の主を確認すると、彼女はそれを無視した。


間もなく鳴り響いていた着メロが消え、暗闇にチカチカと着信を知らせるライトだけが点滅した。


「あぁ、うっざい……今日に限って何でかけてくんのよ……」


彼女は重たい頭を起こし、キッチンに向かった。

イライラしながらタバコを一本手に取り、換気扇の下で火をつける。


ストレスが溜まったときぐらいしか吸わないが、今日はその日だと、ゆっくりタバコの煙を吐き出した。


禁煙外来に通ってもタバコを止められないという連中の気が知れない、やはり自分はそこまで好きになれない。


「ビールでも飲むかな？」


冷蔵庫に手をかけた時、またスマホの着信音が鳴り響いた。



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