契約の婚約者
「ねぇ、ちょっと離れて?考えがまとまんない……」


ブツブツ独り言を言う沙希に、片桐は軽く溜息をつき、腕の拘束を解く。向かい合わせに座ろうと沙希から身体を離した瞬間、今度は腕を強く引かれた。


「あっ、やっぱいい。このままでいて」


「----は?」


流石の片桐も驚く。中腰で立ち上がろうとしていた腰をもう一度バスタブに沈める。


「カタギリさんの腕って気持ちいいや……」


無意識なのだろうか、沙希は自から腕を絡めさせ、片桐の広い胸に背中を預ける。


まるで猛獣を手懐けたような感じだ。


「沙希、お前は……」


「何?うるさいよ」


片桐の腕の筋肉の筋をなぞりながら、続く言葉を一蹴する。



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