契約の婚約者
「沙希?」


無言で大人しく抱かれている沙希を片桐は覗き込む。


彫刻のような綺麗な顔が沙希の視界を捉える。


男とは思えないほど透き通った綺麗な肌に、すっと伸びた鼻梁と引き締まった唇。


----そして、人を射抜くような鋭い双眸。


沙希は片桐の能面のような顔が好きだった。だが、今日はその冷淡とも評される能面に時折見え隠れする柔らかい表情を見つめていたいと思った。


「ねぇ、やっぱり私へんじゃない?何でこうしていたいんだろ?相手はカタギリさんなのに……」


「それを俺に聞くか?知っていたけど、失礼なヤツだな……」


片桐は沙希の身体を反転させ、膝の上に乗せる。


沙希のマンションのバスタブは二人で入るには十分の広さだが、横抱きが出来るほど、幅は広くない。沙希は窮屈そうに膝を曲げ、片桐を見下ろすように見つめる。



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