契約の婚約者
自然と沙希の指が片桐の前髪をかき上げ、瞼、鼻、頬、と滑るようになぞる。


真っ直ぐに見つめ返され、視線を外せない。


指が唇を捕らえたとき、初めて自分からこの男にキスをしたいと思った。


項に腕をかけ、そっと唇を重ねる。


最初は軽くリップ音を立てて、唇が触れるだけのキス。


次は、何度も唇に吸い付く。上唇を舐め、下唇に吸い付き、離さない。


時折沙希は首をかしげながら、何か確かめるように、片桐の唇を貪る。


何度キスをしてもしたりない----


ただ、分かるのは、ずっとこうしていたいということだけ----



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