契約の婚約者
「で、何が知りたいの?」


「だからさっきから聞いているじゃない!沙希は片桐さんとどういう関係なの?」


「話せば長くなるしなぁ」


沙希はもったいぶって中々話そうとしない。


別に話したくないわけではない。奈央をからかうことが楽しくて性がないのだ。


ここまできたら、片桐との関係を奈央に隠すつもりはない。だが、いざ話そうとすると、どう説明したらいいのかわからなくなるのも事実。


親の決めた婚約者ではある。


でも、それは振りで身体の関係だけだ、と言ってしまえばいいのに、沙希はそう説明することを躊躇った。


片桐が沙希との結婚を本気で考え始め、半ば強制めいたプロポーズもされた。そして、セックス中に流されたとはいえ、沙希はついそれを受け入れてしまった。


後悔しているようで、していない自分がいる。


完全にすっぱりと片桐との関係を切ってしまえばいいのに、あの居心地がよくなってしまった腕から離れると思うと、何だか胸がモヤモヤする。


こんな煮え切らない自分は初めてだ。



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