契約の婚約者

「-----沙希？」


沙希の言葉を待っていた奈央が、痺れを切らした顔で覗き込む。


「あぁ、ごめん」


「話せば長くなるって、そんな複雑な関係なの？」


「ん～関係は至ってシンプル。親の決めた婚約者なの」


「----へ？こ、婚約者ぁ？」


奈央は目を大きく見開いて驚き、ご飯が喉に詰まったのか、慌ててお茶を流しこむ。


「冗談、じゃないよね？ホントに？」


「そ、ホント。お見合いの席で相手が片桐だって分かった時は流石にびっくりしたけどね～」


奈央はイマドキ親が決めた婚約者なんているんだ、という顔をしている。


そう、そういう家はまだあるのだ。