契約の婚約者
自分は結婚というものに、酷く偏見的な固定観念を抱いていたのだろうか?


同じ人間と同じ空間で半日以上を一緒に過ごすことなど以前の沙希には考えられなかった。


片桐と一緒にいる時間は窮屈さもイライラもなく、一緒にいることがごく当たり前で自然でいられる。


それは片桐がありのままの沙希を受け入れ、我ままも全て包み込むようにきいてくれるから、と感謝しないところが沙希らしい。


普通の男なら耐えられないだろう。


ここ一ヶ月、片桐には骨の髄まで甘やかされ、彼が出張でいない夜は少し寂しいとすら思うようにもなった。


「私も重症だな……」


沙希は思い身体を起こしながらボソッとひとりごちる。


沙希は苦笑しながらベッドわきにかけてあった片桐のシャツを羽織り、リビングへと向かった。



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