契約の婚約者
「沙希-----」


「何?」


片桐の表情が急に真面目になる。背中に回された腕にぐっと力が入り引き寄せられた。


「俺は遅かれ早かれ片桐の家を継ぐ。黒沢に言ったことは冗談じゃない」


「それが?私には関係ないよ」


「お前ならそう言うと思った。確かにはお前には関係ないな。沙希、お前はお前で自由にしたらいい」


「言われなくてもするけどね。でも、どうしたの?継ぎたくなかったんでしょ?」


「継ぎたくなかったわけではない。与えられるのにうんざりしていたんだ。だが、一条の家と対等に渡り合うには早々に動いた方が良さそうだ」


片桐の言葉に、真剣な眼差しに彼の決意が感じられる。


彼は本気なのだ、と今更ながら沙希は悟る。



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