契約の婚約者
「痛い、痛い!」


引っ張られた頬を真っ赤にして奈央が叫ぶ。


かなり強く、そして長く引っ張っていたようだ。


それでも沙希は謝らず、毒を吐く。


「太って指輪はめられないってことになるなよ?」


「もう、どうしてそんな意地悪ばっかり言うのよ……」


涙目の彼女がかわいい。


もっと意地悪をしたくなる。


「後は……片桐のことはどうするの?耳に入るのも時間の問題でしょ?」


片桐のことはどうでもよかったが、奈央を困らせたい衝動にかられ、わざと名前を出した。


「うん、そうなの……」


「ちゃんと話してきなよ?」


思いっきりヤツを振ってこい。そして、罪悪感で泣け、そんな思いがこみ上げる。



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