契約の婚約者
片桐は沙希を背後から抱きしめるようにその大きな身体を起こした。
背中に感じる体温が心地よく、前から抱きしめられた時と違った安心感があった。
肩口にあたる髪がくすぐったい。
何だ、このピンクな感じは……と沈黙に耐えられず、沙希は咄嗟に片桐から身体を離した。
片桐は一瞬つまらなそうな顔を見せたが、もとの表情に戻り、沙希の頭を軽く撫でベッドから立ち上がった。
「朝食、何でもいいんだな?」
「うん、冷蔵庫の中身勝手に使って」
「じゃぁ、先にシャワー借りるぞ」
「どうぞ~」
沙希は掌をヒラヒラ振って片桐を部屋から追い出し、もう一度ベッドにダイブする。
「眠い……流石に二日間続けてはキツイ……」
枕に顔を埋めると、片桐のスカルプチャーオムの香りがふわっと沙希の鼻先をかすめた。
「最悪……匂いついた……すぐに洗濯しなきゃ」
そう言ってピローケースを外す、その顔はそれほど嫌そうには見えなかった。
一条沙希、生まれて初めて体験する感情だった。
背中に感じる体温が心地よく、前から抱きしめられた時と違った安心感があった。
肩口にあたる髪がくすぐったい。
何だ、このピンクな感じは……と沈黙に耐えられず、沙希は咄嗟に片桐から身体を離した。
片桐は一瞬つまらなそうな顔を見せたが、もとの表情に戻り、沙希の頭を軽く撫でベッドから立ち上がった。
「朝食、何でもいいんだな?」
「うん、冷蔵庫の中身勝手に使って」
「じゃぁ、先にシャワー借りるぞ」
「どうぞ~」
沙希は掌をヒラヒラ振って片桐を部屋から追い出し、もう一度ベッドにダイブする。
「眠い……流石に二日間続けてはキツイ……」
枕に顔を埋めると、片桐のスカルプチャーオムの香りがふわっと沙希の鼻先をかすめた。
「最悪……匂いついた……すぐに洗濯しなきゃ」
そう言ってピローケースを外す、その顔はそれほど嫌そうには見えなかった。
一条沙希、生まれて初めて体験する感情だった。