契約の婚約者
ぐったりした身体を片桐に預け、その広い胸の心地良さにどうしていいか分からない。


「人が我慢しているのに、煽るな……」


そう聞えたが、もう何を言われてもどうでも良くなった。


何も言わずに片桐の背中に手を回せば、腰を抱いた手に力が入り、また唇が塞がれた。


今度は、ソファーに押し倒され、食むような優しいキスが繰り返された。


下腹部がズクズクと疼き、頭しか撫でてくれない手がもどかしい。


そっと離れた唇が発した言葉は沙希の期待したものではなく、自重し片桐自信を戒めたものだった。


「これ以上キリがないな。抑えが効かなくなるから、帰る……」


そう言って片桐は沙希から身体を離した。


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