Buonanotte!
「殺し屋さんっ!!」
このドアの向こうに彼がいる。
でも駄目。
「そのドアには鍵がかかってるの。」
だから開かないの。
私は出られないの。
「亜桃、おいで。ドアを開けておいで。」
「だけど鍵が・・・。」
「鍵なんてかかってないよ。」
え?
「鍵なんて始めからかかってなかったんだ。開けようとしなかっただけ。君は始めから諦めていただけだよ。」
「そんな、嘘・・・。」
「出られないと君は言うけれど、飛ぼうと頑張っても誰かに手で押さえつけられて飛べないと言うのと一緒さ。・・・ねぇ亜桃、その手は誰の手だい?自分の手じゃないのかい?」
目隠しをしたのも、
耳を塞いだのも、
全てこの両手。
何故って?
「・・・だって私が出れば傷付くもの。皆、皆傷付いちゃうんだよ!!」
哀しい。
誰かを傷付けて結局、独り。
それは嫌。
君を信じてないわけじゃないの、君と一緒にいたい。
だけど傷付けてしまったら?
傷付けるのが恐いの。
私のちっぽけな言葉や強がりで誰かを傷付けてしまうのは恐い。
「世界が恐いの。」
彼が笑う声がした。
「僕もだよ。」
嗚呼、彼も一緒なんだ。
「ねぇ、僕が言ったこと覚えてる?」
彼があの日言ったこと。
『世界は楽しいゼ。哀しいことがあったって投げ出したくなったって、ね。』
『大丈夫、傷付けても良いよ。傷付かないから。』
「うん。」
涙が零れた。
「おいで。」
君が笑った。