Buonanotte!

飴玉と少年

「世界は楽しいゼ。哀しくなったり投げ出したくなったって、ね。」


別れ際に殺し屋さんが私に言ったこと。



「これだけは覚えておくと良いよ。」




よく解んないけど殺し屋さんが言うのなら覚えておこうと思った。


「詳しいんだね、殺し屋さん。」



「うん。僕は殺し屋だからね。」


シニカルに笑って手を振って殺し屋さんは行ってしまった。








「ねぇ、殺し屋さんっ。」

ありったけの声を振り絞ったら殺し屋さんは振り向いて首を傾げた。


「なんだい、亜桃。」



「殺し屋さんは・・・」











ねぇ、殺し屋さんは









「独りなの？」











「そうだよ。」



少しだけ泣きそうになった。


哀しかったんじゃないの。

嬉しいと思った。



「お揃いだねっ。」




殺し屋さんは驚いたような顔をしてすぐに笑ってポケットに入っていた手を私に向けて差し延べた。




「おいで。」





殺し屋さんはヘラヘラ笑ってたけど私には泣いてるみたいに見えた。







殺し屋さんの手は冷たかったけど口の中で転がした飴玉は甘くて。



「りんご味だよ。」

ってやっぱり殺し屋さんはヘラヘラ笑った。