蝶
「彼氏さんのこと好きなん?」
遠慮がちに綾香が尋ねる。
「まあなあ…店長ハイボール追加。」
「お前何がハイボールやねん。
絶対好きちゃうやん。」
藤田君がおかしそうに笑う。
核心をつかれたのか
私は悶々としてきた。
表情が曇る。
「好きですよ普通に。」
「じゃあハイボールとどっちが好き?」
「そらハイボールですわ。」
最悪やん~
と周りが野次を飛ばす。
それでも、
好きじゃないなんて答えも
別れるという選択肢も
今のとこ私にはなかった。
弘樹との付き合いの中で
何か行動を起こすことが
億劫になってきたのかもしれない。
やっぱり私は一年前と同じ、
恋に疲れているんだ。