トイレから戻ると

「おい、行くぞ。」

あたしのコートを手渡し
偽者のヴィトンのバッグを
ポンと投げてきた。

「あ、お金。」

黙って会計を
済ませておいてくれたらしい。
財布をガサガサまさぐる。
去年弘樹にもらった
ピンクの色褪せた財布。

「仕舞え。」

藤田くんは無理矢理
財布をバッグに押し込んだ。

「でも、」

「今からどうしよか♪」

「あ…」

ありがとうございます…
あたしは小さい声で
お礼をいった。




< 43 / 60 >

この作品をシェア

pagetop