蜘蛛の糸










「...舞を、見てたから」







 ポツリ、そう囁いた気がした






 なんとなく

 聞こえにくくて






「ん、もう一回言ってくれない?」







 そう聞き返した











 ――― ほんとは、自分の聞こえ間違いにしたかったのかもしれない







「何でもないよー!ちょっと変な事してたから」








 希の鼻のような笑みに

 あたしは肩をなでおろした 












 開きかけた扉に蓋をして

 希の笑顔に呑み込まれるまま





 希の隠れた闇に気づこうともしてなかった





















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