アジアン・プリンス
「何を……自分が何を言っているのかわかっているのか?」

「もちろん。どうしたの? そのために私をここまで連れて来たんでしょう?」

「それは……しかし、なぜだ? 君は兄の妃になるんだぞ。それでも、平気なのか?」

「……レイ?」

「だったら、なぜ? なぜあんなキスを。私のキスに応えてくれたんだ!?」


これまでの冷静さをかなぐり捨て、レイは叫んだ。


そしてティナの答えは――


「あなたが好きだから。愛してるからよ。初めて会ったときから、好きになってしまったの。ああ、わかってる。あなたには婚約者がいるって。でも、あなたの力になりたい。役に立ちたいのよ……レイ」


それは生まれて初めての愛の告白だった。

叶わない恋――でも、一生誰も愛せないと思ってきたのだ。そんな彼女にとって、“誰かを愛して、愛を伝えられたこと”は、これ以上ないほどの幸福だった。


だが――。

レイはスッとティナから離れ、顔を背けて言った。


「君は兄上の王妃に相応しくない。今回の話はなかったことにして欲しい」

「どうして? どうしてなの、レイ」


ティナは思わず、レイの腕に触れる……その瞬間だ。


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