アジアン・プリンス
レイの手がティナの胸元で動き、ブラウスのボタンが3つ目まで外された。

彼の唇は日焼けしてないティナの谷間をなぞり、更に奥を目指そうとした瞬間――


レイのジャケットの内ポケットから携帯電話のコール音が鳴り響いた。


ビクッとしてふたりは顔を見合わせ……無言のまま数秒が過ぎる。

それでも電話は鳴り止まない。やがてレイは深いため息をつき、携帯を取り出した。


『――私だ』


しだいに、レイの表情が目に見えて蒼白に変わる。


『わかった』


たったふた言でレイは電話を切った。ティナは何が起こったのかわからず、海水に浸かったまま座り込んでいた。


「レイ? あの……」

「ティナ、どうかひとつだけ、私の頼みを聞いて欲しい」

「ええ、何?」

「何も言わないでくれ」


レイは無言のままティナを抱き上げ、背徳のビーチをあとにした。


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