アジアン・プリンス
「大丈夫だ。そんな顔をしなくてもいい。――ただ、少しだけ父の苦悩がわかったかもしれないな。国家間の問題さえなければ、彼はおそらく、よき父よき夫として天寿を全うしたであろう。だが私には……」
レイは窓枠を握り締め言葉に詰まった。瞬きもせず、食い入るように浜辺を見つめ続ける。
5分、いや実際には1分程度だったかもしれない。
息苦しい時間が流れた。
(今ならまだ間に合う……)
レイはこの時、心の内に芽生えた愛を、理性と称号の名の下に強引に引き剥がした。
そして、愛を知った背徳の海に投げ捨てる。傷口からは血が滴り落ち、予想外の痛みに彼は眩暈を覚え……。
(私に……できるのか?)
「サトウ、本島に戻る。ヘリを用意してくれ」
「まだ、ミス・メイソンの着替えが整ってないのでは?」
「先に戻ろう。今は、同乗すべきでない。あとで迎えのヘリを回すと彼女に伝えてくれ」
「承知いたしました」
濡れた髪をかき上げ、ひとつの決意を胸に執務室をあとにするレイだった。
レイは窓枠を握り締め言葉に詰まった。瞬きもせず、食い入るように浜辺を見つめ続ける。
5分、いや実際には1分程度だったかもしれない。
息苦しい時間が流れた。
(今ならまだ間に合う……)
レイはこの時、心の内に芽生えた愛を、理性と称号の名の下に強引に引き剥がした。
そして、愛を知った背徳の海に投げ捨てる。傷口からは血が滴り落ち、予想外の痛みに彼は眩暈を覚え……。
(私に……できるのか?)
「サトウ、本島に戻る。ヘリを用意してくれ」
「まだ、ミス・メイソンの着替えが整ってないのでは?」
「先に戻ろう。今は、同乗すべきでない。あとで迎えのヘリを回すと彼女に伝えてくれ」
「承知いたしました」
濡れた髪をかき上げ、ひとつの決意を胸に執務室をあとにするレイだった。