アジアン・プリンス
数時間後、ドレスアップしたティナが通された部屋は“貴婦人の間”と書かれてあった。


「こちらでお待ちください」


控え室とはいえ充分な広さがある。今夜はティナの専用らしい。

ティナは窓からボンヤリと中庭を見ていた。

ライトアップされたそこは幻想的で美しく、ティナが頭に思い描く、南国の島、を映し出していた。

そこに、白い影が過ぎる。

いや、白いドレスを着た女性だった。真っ黒いストレートの髪を後ろでひとつに束ね、背中に垂らしている。凛とした横顔は東洋的で、レイと同じ、自尊心の高さを思わせた。

食い入るように見ていたのがわかったのだろうか……


「失礼。あなたが、ミス・クリスティーナ・メイソンかしら?」


それは綺麗なクイーンズイングリッシュだった。


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