アジアン・プリンス
見るからに普通のコテージだ。

最新の設備が整っているわけでもなく、室内の装飾も宮殿に比べれば質素そのものである。

何より驚いたのが警備システムだ。センサーなど全く見当たらず、玄関ドアにも一般家庭の鍵が取り付けられていた。

更には、どれほど周囲を見回しても、普段レイに張り付いている警護官の姿は影も形もない。


「レイ。ミスター・サトウは……あ、ニック・サトウはどこにいるの? 王宮と宮殿以外で彼があなたの傍から離れることはないんでしょう?」


レイはようやく緊張の解けた顔をして、ティナを見て微笑んだ。


「どこにいるかって? 私を宮殿に送り届けた後、自宅に戻ったはずだが。彼は独身でひとり暮らしをしている。恋人がいるとは聞いていないから、真っ直ぐ官舎に戻ったのではないかな」

「待って、待ってレイ。そんなことを聞いてるんじゃないわ。ねえ、どうしてあなたの傍にいないの? それに彼の父親で補佐官のミスター・サトウはどこ?」

「君は、私より彼らのことが気になるようだ」

「そうじゃなくって! 私より彼らが大事なのはあなたでしょう?」


ティナは、いつまで待っても入って来ないアンナが気になった。自然と、視線が玄関に向いてしまう。


「ひょっとしてアンナを気にしてるのかい?」

「それは……」


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