アジアン・プリンス
レイはふとフィアンセの顔を思い浮かべようとした。だが、何も浮かんでこない。それもそのはず、レイが婚約者のミサキ・トオノに会ったのはわずか2回。
それは12年前に婚約パーティをしたときと、7年前にレイが大学院の博士課程を修了して国に帰る直前のこと。大使館で顔を合わせたが、親に促されるまで彼女はうつむいたままだった。
挨拶以外は何も話そうとはせず、レイも特に話しかけることはしなかった。セーラー服を着た小柄な少女だったように思う。
当時から、外務大臣として国の要職に就いていたトーマス・スタンライトが、あからさまな不満を口にしたことは覚えている。
『あれで未来の王妃が務まりますかな? 我が国がいかに先進諸国から蔑ろにされているかわかろうものですな』
『サー・トーマス、口を慎むべきではないか? ミサキは私の婚約者だ』
レイのひと言に、スタンライト外務大臣は渋々黙り込んだ。
国のための婚約、というのならそれはミサキも同じだろう。
レイは義務を忘れ、権利ばかり主張するような人間ではない。婚約者として、最大限ミサキの意思を尊重してきたつもりだ。
心遣いが足りないと言われればそれまでだが……。
それは12年前に婚約パーティをしたときと、7年前にレイが大学院の博士課程を修了して国に帰る直前のこと。大使館で顔を合わせたが、親に促されるまで彼女はうつむいたままだった。
挨拶以外は何も話そうとはせず、レイも特に話しかけることはしなかった。セーラー服を着た小柄な少女だったように思う。
当時から、外務大臣として国の要職に就いていたトーマス・スタンライトが、あからさまな不満を口にしたことは覚えている。
『あれで未来の王妃が務まりますかな? 我が国がいかに先進諸国から蔑ろにされているかわかろうものですな』
『サー・トーマス、口を慎むべきではないか? ミサキは私の婚約者だ』
レイのひと言に、スタンライト外務大臣は渋々黙り込んだ。
国のための婚約、というのならそれはミサキも同じだろう。
レイは義務を忘れ、権利ばかり主張するような人間ではない。婚約者として、最大限ミサキの意思を尊重してきたつもりだ。
心遣いが足りないと言われればそれまでだが……。