アジアン・プリンス
(39)プリンスの婚約者
「まあ! クリスティーナ様……まさか、こちらにお戻りだなんて」
王宮に足を踏み入れた途端、驚いた声を上げたのは女官長スザンナ・アライだ。
だがその声はこれまでに比べ、無条件で歓迎されるムードではなかった。女官長は戸惑いを露わにし、ティナもなんと答えたらいいのかわからない。
他の女官たちや王宮の人間も、一様にティナとは距離を置きたがっている。敵意とまではいかないが、ティナが以前味わったのと同じ気配を感じる。それは、“侮蔑”だった。
「殿下のご命令で、ミス・クリスティーナ・メイソンをお連れいたしました。殿下は最上階の宿泊室でございますね」
ニックはそう言うと、さっさとティナを促し、階段を上がろうとする。
そんな彼を、女官長は慌てて止めようとした。
「少々お待ち下さいませ。私が皇太子さまにご確認しましてから……。ニック! お待ち下さいと申し上げておりますでしょう! あちらのお部屋には、日本からの」
「殿下のご命令と申し上げております」
「しかし、お部屋にはあの方が……。クリスティーナ様をお通しするのは」
渋る女官長にニックは一歩も引かない。
「責任は私が取ります。よろしいですね、スザンナ」
ティナが女官長とすれ違う時、彼女は気まずそうに視線を逸らせた。それは憐れみと同情の混ざった微妙な眼差しで……。
その数分後、ティナは彼女たちの視線の意味を知る。
王宮に足を踏み入れた途端、驚いた声を上げたのは女官長スザンナ・アライだ。
だがその声はこれまでに比べ、無条件で歓迎されるムードではなかった。女官長は戸惑いを露わにし、ティナもなんと答えたらいいのかわからない。
他の女官たちや王宮の人間も、一様にティナとは距離を置きたがっている。敵意とまではいかないが、ティナが以前味わったのと同じ気配を感じる。それは、“侮蔑”だった。
「殿下のご命令で、ミス・クリスティーナ・メイソンをお連れいたしました。殿下は最上階の宿泊室でございますね」
ニックはそう言うと、さっさとティナを促し、階段を上がろうとする。
そんな彼を、女官長は慌てて止めようとした。
「少々お待ち下さいませ。私が皇太子さまにご確認しましてから……。ニック! お待ち下さいと申し上げておりますでしょう! あちらのお部屋には、日本からの」
「殿下のご命令と申し上げております」
「しかし、お部屋にはあの方が……。クリスティーナ様をお通しするのは」
渋る女官長にニックは一歩も引かない。
「責任は私が取ります。よろしいですね、スザンナ」
ティナが女官長とすれ違う時、彼女は気まずそうに視線を逸らせた。それは憐れみと同情の混ざった微妙な眼差しで……。
その数分後、ティナは彼女たちの視線の意味を知る。