アジアン・プリンス
そんなふたりにレイが告げた言葉は。


『我が国に、愛し合う恋人たちを引き裂く法律はない。そしていかなる場合も、子供の誕生は祝福されるべきだ』


だが、日本側と遠野家がそれに同意するまで、事実は隠す必要があった。

レイはミサキを王宮に滞在させ、真実を伏せたまま、結婚式の準備を進めさせたのである。



一連に記事のせいで、レイは婚約を解消してティナと結婚する、という噂があった。

しかし、ミサキの子供の父親はレイだという噂を、今は否定できない。

その結果、一転してティナはレイの『遊び相手』『側室候補』と誤解されることになってしまった。挙げ句の果ては、ニックまで暴走する始末で――。


「それ見たことかと思っていらっしゃるのでしょうね?」


レイは壁に掛けられた歴代国王の写真を見上げて言った。

1番右端には兄シン国王が、その隣に父ソウ国王が並んでいる。


「ですが父上、私はあなたのようにはなりませんよ。国も称号も、そして愛する女性も、守って見せます、必ず!」


深いアズル・ブルーの双眸が、確固たる意思を持ち、凛然と輝いていた。 


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