アジアン・プリンス
アメリカ人女性を花嫁に迎え、レイが王座につくのはチカコが黙ってはいまい。今回のミサキの件で彼女との結婚が流れても、レイの王妃は日本人女性が選ばれるはずだ。

もし、可能性があるとすれば……


『愛を望むなら、王位を捨てるべきだったのだ。私なら、そうするだろう』


レイの言ったこの言葉。


だが、あのレイに限って国を捨てることはあり得ない。

そうなれば、チカコを黙らせるためには、彼女の望むまま日本人女性を現国王妃に迎えるかもしれない。そして、最新医学を用いて後継者を産ませるのだ。

だがそれは、レイの祖父がしたことと同じ手段となる。


レイの祖父はアメリカ人女性との婚約を断り、自国民の妻を得た。それがフサコ妃だ。

自身は愛する妻と子供を得ながら、息子にはアメリカ人女性との結婚を強要した。自身の罪を息子に償わせようとしたとも言える。


アズル王室は不幸の連鎖を続けている。

レイなら断ち切ってくれると思ったが……。彼もまた、自身の幸福と引き替えに、不幸な花嫁と不幸な子供を作るのだろうか。


サトウは誰よりレイの幸福を願っていた。

“レイ皇太子”の幸福を願っていたのである。


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