アジアン・プリンス
ティナは昼間の様子から見て、ニックが違法行為を働いたことを知った。レイは彼を罰するのだろうか……そのことが気にかかる。 


「ティナ、君はニック以外に心配することがあるんじゃないのかい?」


レイはゆっくりと奥まで入ってきて、ティナの横に腰かけた。

室内は薄い闇に包まれている。ティナが考えごとをするため、電灯を点けていなかったせいだ。満月の光に照らさた庭のほうが、どう見ても明るかった。


「ミサキのことは聞いたわ。――ご結婚おめでとうございます」


スザンナが言っていた、2週間後の挙式をレイが明言した、と。

国王のお妃探しではないか、との噂が、実はレイの新しい恋人探しだとマスコミに報道され、最終的に、レイはティナに辿り着いた。

それがこんな結末を迎えることになり……スザンナの目には涙があった。


「だからもういいのよ。あなたは正しかったわ」

「祝いの言葉はミサキに伝えておこう。ところで、ミセス・サイオンジはえらくご立腹だったが」


< 201 / 293 >

この作品をシェア

pagetop