アジアン・プリンス
ティナはハッと気がついた。

レイの結婚のことを考え始めると、他のことがどうしてもおろそかになってしまう。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。彼女の顔を見たら、あの少女を利用したことを思い出して……つい」

「あの少女なら、もう宮殿で働いてはいない」

「そんなっ! 酷いわ。あんまりよ。あなたは皇太子なのに、その程度の正義も守れないの?」

「……彼女の一家は国の保護を受け、両親の怪我が全快するまでの生活は保障された。あの娘は島の学校に通い始めたと聞く。来年には高校に進学できるだろう」


レイの言葉を聞き、ティナは口をぽかんと開けたままだ。


「さて、お嬢さん。君のプリンスはこの程度の正義しか行えないが……。許してもらえるだろうか?」

「ずるいわ。そんなこと……早く言ってくれればいいのに。それに……あなたは私のプリンスじゃないわ」


レイを正面から見るのも辛い。同じ部屋にいて、ふたりきりで話すのも苦しい。

ティナはそんな想いを抱えレイから視線を外した。


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