アジアン・プリンス
「殿下、次の船にミス・メイソンが乗船されておいでです」

「何度も言わずとも、わかっている」


王宮からの連絡はサトウだった。

レイからのメールで『王室法改正案』の真相を知り、サトウは慌ててティナの元を訪れる。だが、ひと足遅く……。ティナはセラドン宮殿を後にしていた。

サトウはすぐさまビジネスゲートに連絡し、ティナを引き止めるよう指示する。

しかし、ゲートを通過した形跡はなく、その後のゲートチェックにも引っ掛からない。直後、観光ゲートから出国したとの報告を受けたのだ。

しかし、その時すでに、ティナが予約を入れた出発便が判明しており……。それは、レイのアズウォルド到着後とわかった。

サトウがレイに緊急連絡を入れたのは、そのあとだった。


「まったく、君たち親子はそんなに私を信用していないのか? 私が皇太子の役目を投げ出し、国を捨てると本気で思っているのか?」

「も、申し訳ございません」


レイの怒りは行き場がなく、ついつい父親の分までニックを叱り付けてしまう。

だが、ティナもティナだ。

あれほど待つように言い、バングルも外すな、と伝えた。たとえサトウに何を言われても、なぜレイを信じようとしないのか。


そんな苛立ちを抱え、レイは王族専用ルームの窓から海を見ていた。


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