アジアン・プリンス
水面に顔が出た瞬間、ティナは必死で息をした。

何度も何度も、息を吸って吐いてと繰り返す。


「ティナ! 怪我は!? どこか痛むところはないか?」


それはレイの声に聞こえた。


だがまさか、本物のわけがない。レイは日本にいるのだ。こんなに早く帰って来られるはずがない。

それに、レイはこの国の皇太子。一般市民のアメリカ人女性を助けるために、自ら海に飛び込むなど……あのレイに限って、そんな愚かなことをするわけがないのだ。


「ティナ、苦しいのか?」

「い、え。……だいじょうぶ」


そう答えた直後、ティナは再び唇を奪われた。


強く、激しく、レイはこれまでの冷静な仮面を捨て去り、男の本能を剥き出しにしたキスをする。


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