アジアン・プリンス
「あ、あの……ま、まって、ちょっと」

「駄目だ。もう放さない。君のブロンドが海中に見えたとき、心臓が止まった。ティナ、君はポセイドンの花嫁になりたいのか?」

「違うわ。でも……そのほうが良かったのかもしれない」

「いいや、ティナ。君はポセイドンの妻には相応しくないよ。こんなじゃじゃ馬は、さすがの彼も持て余すだろう」


レイの言葉にティナは一瞬ムッとした。でも、彼の言うとおりだ。


いつだって悪気などない。今回も自分から飛び込んだわけではなかった。でも、わざとではなくても、役に立つことをしようとしても、トラブルばかり引き起こしてしまう。

自分はどうしてこうなのだろう。

静かにしようとすれば騒動になり、隠れるつもりが目立っている。


落ち込むティナにレイの声が聞こえた。


「まったく! 君と一緒にいると、私はとんでもないことばかりしている。そのせいでサトウやニックまでメチャクチャだ」

「ええそうよ! 私はみんなを困らせるとんでもない女なの! 誰の妻にも相応しくないわ! 放っておいてちょうだい」

「いや駄目だ。君をアメリカに帰すのはやめだ! もちろんポセイドンにも渡さない。君に相応しいのはこの私だ。――ティナ、愛している」


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