アジアン・プリンス
「メチャクチャだわ、レイ。一国のプリンスが、ひとりの女のために、海に飛び込むなんて!」

「そうでもないよ。古来、我が国の男は、鮫のいる外海を泳いで女性の住む島まで行き、結婚を申し込んできた。できれば私もそうしたいが……君の住むアメリカまで、最も近いハワイでも2000キロはある。泳ぐのは無理だ。せめて、ヨットを使わせて欲しい」


ティナは、最初は冗談かと思った。

笑おうとしたが、レイの至極真面目な表情に、彼女の顔は泣き笑いになる。


そのまま、レイの背中に手を回し、ギュッと抱きついた。


「ティナ? これはイエスかい? それとも」

「私はとっくにアズルブルーの海に溺れているのよ。息もできないくらい。あなたの傍にいられるなら、世界中を敵に回しても後悔しないわ。私は」


――あなたを愛してるわ。

そう続けようとした唇を、レイは再び奪った。


長い長いキスに、ニックはとうとう業を煮やし、


「殿下! それ以上は陸に上がってからにして下さい」


と、叱られたのだった。


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