アジアン・プリンス
レイの指が素早くワンピースのファスナーを下ろした。あっという間にティナの身体からワンピースは剥ぎ取られる。その手慣れた様子に、ティナの不安は確信へと変わっていく。

あとは、シルクのキャミソールとショーツだけだ。

レイはティナの陶器のような肌を優しく愛撫した。キスを繰り返し、ゆっくりと撫で擦りティナの興奮を煽ろうとする。


だが、唐突にその動きが止まった。


「まったく、困った花嫁だ。何が気掛かりなのか言ってみなさい」


レイはため息をひとつ吐くと、ティナから離れ、体を起こした。

ティナの心が急速に冷めたのを感じ取ったらしい。仰向けのままのティナにも手を差し伸べ、ベッドに座らせてくれる。


「……あ、あと1週間が待てないなんて。これまでは、そんなに空けたことがないって言うことでしょう? そんなにたくさんの女性と……。あなたをひとり占めできるなんて、私の勘違いならそう言ってちょうだい。この……ベッドでも、愛し合った人が居たのかと思ったら……私」


頭に浮かんだことを、ティナはそのまま口にした。

だが、改めて言葉にすると、余計に現実と想像を混同して、ティナの瞳から涙が零れ落ちる。


アズウォルドに来るまで、涙は涸れ果てたつもりだった。

でも、レイを愛して、たくさんの感情がティナの中に吹き荒れている。醜い嫉妬などしたくないのに……しかも、顔も人数も存在すら確かでない相手をなんて。


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