アジアン・プリンス
~*~*~*~*~


「ハイ、ティナ……あ、失礼致しました。王后陛下におかれましては、本日もご機嫌麗しく存じ上げます」

「あら、レディ・アンナもごきげんよう」


そんな挨拶を交わし、ティナとアンナは顔を見合わせて吹き出した。


王宮に移って5日が過ぎた。ようやく部屋の名前と道順を迷わなくなったティナのもとに、アンナが訪れる。 

結婚式や晩餐会、各種式典にも出席してくれたのだが、ろくに話をする時間もなかった。


「レイの建て直した王宮が、初めて賑わってる感じね」


アンナの言葉にティナも頷く。

外国に嫁いだ王女の配偶者や子供・孫まで訪れ、そのほとんどが宮殿に宿泊していた。


これだけを見れば、どうやらアズル王室は女系のようだ。

王女の子供も娘が多く、そのせいか、尚のこと王宮は華やいで見える。


そんな中にあってもアンナは相変わらずシンプルな格好だ。綿シャツにサブリナパンツ、長い黒髪も無造作にバンダナで縛っていた。


< 245 / 293 >

この作品をシェア

pagetop