アジアン・プリンス
それは衝撃的な言葉だった。

まさか、という思いと、やっぱり、という思いが交互にティナの胸で吹き荒れる。


「アーロンがレイの子供だとおっしゃるの?」

「あら、そう聞こえまして? わたくしはただ……息子の瞳の色に感動しておりますの。王妃様にもお褒めいただけて。茶色い髪も、レイによく似た柔らかい髪質なんですのよ。何度も触れたので、よく覚えておりますわ」


ティナはもう限界だった。

どうしてハネムーンに来て、こんな女に邪魔されなくてはならないのだろう。しかも、自分は王妃のはずなのに。

だが、エリザベス王女の瞳はあからさまにティナを見下していた。外国人……それも米国人でたかが平民、そんな目だ。


「レイもすぐに来ると思います。私は用事を思い出したので、これ以上のお相手はできませんけれど。どうぞ……勝手にお待ちになって下さい!」


ティナは勢いよくソファから立ち上がった。

アンナの病院かアーレットの家に行こう、ティナが身を翻したそのとき――リビングの入り口にレイが立っていた。


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