アジアン・プリンス
――「子供は平等に祝福されるべきだ。親の立場により差があってはならない」


王室法改正時にレイはそう明言した。

だが、不義を働いた親の責任まで免除すると言ったわけではない。


エリザベスと兄シン王子の関係も不倫だが、その件は不問になっている。シン王子には証言能力がなく、物的証拠もない為だ。


しかし、今回はそう甘く済ませるわけにはいかない。

レイは、先々代国王との不適切な関係により、エリザベスに与えた王女の称号と王位継承権を取り消すことを通告した。

加えて、国王権限によりアメリカ政府にアーロンの国籍取り消しを求めること。更には、彼を先々代国王の庶子として認め、王子の称号と国籍・王位継承権第3位を与えることを約束する。

その上で、アーロンの後見人をレイが務め、エリザベスからアーロンに関するすべての権利を取り上げる、と。


ただし、エリザベスが今後も沈黙を守り、アーロンのよき母親として努めるなら、その執行をアーロンの成人まで猶予する。

リューク王子も含めた内々で、そんな取引を行った。



「少し厳しくない? 不倫は片方だけではできないものよ」

「ああ、確かに。だが12年前、彼女には真実を告げる選択肢があった。息子のことを思うなら、そうしただろう。息子から父を父と呼ぶ権利を奪ったのは、母である彼女だ」

「レイ……」


ティナは操舵用のハンドルを握るレイの手に自分の手を添え、体をそっと寄せた。


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