アジアン・プリンス
覚えたばかりの快感がティナの全身を貫いた。

船の揺れとは違う、レイの起こした甘やかな波にティナの太腿は小刻みに戦慄く。背筋に力が入り、ごく自然にティナは声を上げた。そしてそれは入り江に響き渡る。


(誰かに聞かれたら……見られたら、どうするのかしら?)


ほんの一瞬、ティナの胸をそんな不安がよぎった。


「ティナ、君は最高だ。君をもっと知りたい。そして、私を知って欲しい」


レイに抱き締められ、開いた唇に燃えるような唇が押し当てられる。

そしてデッキからキャビンに下りたあとも……。ティナはベッドに飛び込むものだとばかり思っていたのだ。ところが、レイは様々な場所、様々な形で愛し合えることをティナに教えたのだった。



「ねえ、レイ。アンナがあなたも普通の男だと言っていたわ」


疲れた体を癒すように、ベッドの中でわずかな時間だけティナはまどろんだ。

目を開けたとき、レイの香りに包まれていて、ティナはそんな言葉を口にしていたのだった。


「普通? どんな風に?」

「禁欲のゲームを続けていたら、あなたをエリザベス王女に奪われてしまうって」

「どんなゲームでも付き合うよ。私が普通の男になれるのは君の前だけだ。いや、もちろん後ろでも上でも……君が望むなら下になってもいい」


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