アジアン・プリンス
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数ヵ月後、レイは休暇を取り日本に向かうというソーヤを空港で見送った。


「ソーヤ、無理はしなくていい。私はお前にも幸福な結婚をして欲しいと思っている」

「ああ、わかってるよ。でも、しばらくは国にいないほうがいいだろう。あの母をひとりにすると何をしでかすかわからないからね」

「だが……」

「これまでレイに頼り過ぎていたんだ。アーロンのこともそうだ。いい加減、ひとりで背負うのは止めてくれ。僕はいつまでも可哀想な子供じゃないし、王子と呼ばれる以上、その義務は果たすつもりでいるんだ」


ソーヤはしばらくの間、日本に滞在することが決まった。母・チカコの里帰りに同行するのだ。

理由は、エリザベスとアーロンの件である。


エリザベスはさすがにレイを恐れたのか口を噤んだ。

だが、エリザベスの別れた夫ジョーンズ氏が、彼女が迂闊にも口にした言葉から真実を想像してマスコミに暴露したのである。

アーロンの気持ちを考えたレイは、それらを否定しなかった。


だが、夫の不貞を知り激怒したのがチカコである。


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