アジアン・プリンス
「それは……酷い」


ソーヤも絶句した。


レイは、覇気がなく少年らしさの足りないアーロンのことを気に掛けていた。

それが、暴力ではないにせよ、両親による言葉の虐待だと知ったとき、2度とアメリカに帰さないことを決めた。


ルビー王太后も息子を愛してはいなかった。義務のためレイを産み、ジョセフ・ジョーと呼び続けて1度も抱かなかった母である。

祖父と父は激しく対立していた。だが、今のレイがあるのは祖父による厳しい教育の賜物だ。そして愛情は、祖母のフサコが惜しまず与えてくれた。

それだけでなく、レイは乳母や側近、女官にも恵まれたことに感謝を忘れたことはない。

両親の愛を得られずとも、人は幸福になれる。

そのことを、レイは身を持って知っていた。


リュークは称号を返上しようとしたが、レイはそれを認めず。逆に、アーロンとリューク夫婦を王宮に招いたのだった。


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