アジアン・プリンス
「ティナも賛成してくれたのでね。私がアーロンの父親代わりになろうと思う。だが……」

「だから、母のことは任せてくれって。僕がどうにかするよ。それと、兄上をよろしく頼む。何かあったらすぐに戻るから」

「わかっている。シン王子は私にとっても大事な兄だ」


ソーヤはチカコの怒りを収めるため、日本人女性との見合いを承諾したのだ。 

もし、レイとティナに子供が産まれなかったら、或いは王女ばかりだったら……。

女王ではなく国王を望む国民性からいって、ソーヤに王子がいれば後継者に望まれる可能性も高い。

チカコにはまだそんな打算があるようであった。


だがレイにとって、それは些細なことである。

兄弟、そして、その子供たちが、いつまでも仲良く国家と国民のために生きて行ける事、重要なのはそのことだ。

それが平和に繋がり、彼らの子供たちにアズル・ブルーに輝く海を残すことに繋がる。


「ソーヤ、何かあれば必ず力になる」

「わかってる。でも、1番ありがたいのはプリンスを作ってくれることなんだけど。母も間違いなく諦める」

「――鋭意努力中だ」


屈託なく笑うソーヤにレイも笑顔で返した。


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