アジアン・プリンス
ティナは深く息を吐くと両手を頭の上で組み、グッと押し上げた。

力いっぱい背伸びをする。

さすがに読む新聞も雑誌も底をついた。長く同じ姿勢でいたため、体のあちこちが強張っている。ティナは軽く動いて体をほぐしたのだった。


ティナは、皇太子の住まいであるセラドン宮殿の応接間にひとり佇んでいた。

もうすぐ、深夜の12時を回る。

まさか、こんな時間まで戻ってこないとは思わなかった。

最初は、宮殿のスタッフが話相手をしてくれた。でも、彼らは皆、通いだという。ティナがひとりでも大丈夫だと告げると、全員引き上げてしまったのだ。


王宮に比べればこの宮殿はかなり狭い。怖いということはないが、“心細い”が本音だ。

でも、どうしても今日中に理由を聞きたかった。必要とあれば、バングルを返すつもりで訪ねたのである。


宮殿のスタッフに話を聞いたところ、この離宮にはレイの祖母上、先々代の王妃『プリンセス・フサコ』と呼ばれる女性が住んでいたという。

彼女はアズウォルド国籍を持つ日系2世だった。


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