アジアン・プリンス
溺れたような感じではなく、どうやら自分の意思で潜ったらしい。一瞬、ドキッとしたが、ティナはレイが浮き上がってくるのをじっと待った。


1分が過ぎる……そのまま1分30秒、そして2分が過ぎた頃、ティナの鼓動はスピードを速めた。


「プリンス? レイ皇太子? いい加減に上がって来て下さい!」


水の中まで聞こえるはずがないのに……ティナは思わず叫んでいた。


3分……4分が過ぎた時、彼女はいてもたってもいられなくなる。


「レイ! レイ! どこなの? 戻ってきて、レイ!」


(どうして上がって来ないの? どうして急に潜ったりしたの? 訳がわからない。たった今まで綺麗なフォームで泳いでいたのに……)


とうとう5分を回った。

ティナは長袖のシャツとパンツを脱ぎ、下着姿のままプールに飛び込んだ。


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