アジアン・プリンス
レイのキスは激しさを増し、ティナの唇を割る。


ゴボッと息が漏れ――レイは唇で覆うとティナが苦しくないように口移しで酸素を送り込んできた。


ふたりの脚が絡み合い、直接触れる部分が燃えるように熱くなる。ティナ自身もレイの腕を掴み、抱きついたその時――。


プールの中央が盛り上がると、ふたりは一気に浮上した。

水上に顔を出した途端、レイはキスをやめる。しかし体は……とくに下半身はまだお互いを求め合ったままだ。


荒い呼吸を繰り返し、ティナはどうにか目を開けてレイを見た。


彼女より遥かに長い時間、水中に潜っていたはずなのに、レイの呼吸は全然苦しそうではない。ただ、アズル・ブルーの瞳に苦渋の想いを映し出していた。


「レイ、どうして? ……いったい……」

「すまない。苦しかっただろう」

「そうじゃ……なくて」

「もし、君が私を訴えるなら……」

「そうじゃないわ!」


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