アジアン・プリンス
その日の午後――皇太子の側近を名乗る男性がティナを迎えに来たのだった。

「皇太子補佐官のサトウです。アメリカを発つ前にご挨拶いたしましたが、ご記憶いただいておりますでしょうか?」

「ええ……はい。我が家で行いましたプリンスの歓迎パーティにも、同行されておられましたよね」

「はい。補佐官ですから」


サトウはニコリともせず答える。アメリカを出発する前より刺々しさは増しており、ティナも言葉を失った。


「皇太子殿下のご命令により、あなたをお迎えに上がりました。ご同行をお願いいたします」

「レイ……殿下の?」


(ああ、やっぱり強制送還されるんだわ)


ティナは覚悟を決め、荷物を纏める。でも、もう1度だけでいいからレイに会っておきたかった。そんなことを考えながら……。

ところが、


「ミス・メイソン――荷物は不要です。どうぞ、そのままで」

「このままで?」

「はい。ヘリポートに殿下がお待ちです。お急ぎ下さい」


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