アジアン・プリンス
「そのお連れした日本人女性は、あなたの一存で入国されてますね。正式な手続きを踏まれていない」


咳払いをひとつすると、レイは平静を取り戻した。


「そ、そんなこと。わたくしは、先の陛下より……」

「よろしいですか? 明日中に日本に帰国させて下さい。その女性をこの島に連れてきた場合、又は、明後日も我が国に滞在させた場合、不法入国として強制送還し、無期入国停止の処分をします」

「できるはずないわ! そ、そんな真似をしたら、わたくしが知っていることを全てマスコミに」

「できます。私はアズウォルド王国の摂政で皇太子です。国家と国民を守るためなら、手段は選ばない。いいですか、ミセス・サイオンジ、私がやると言えば、必ずやります」


冷静な口調とは裏腹に、そのアズルブルーの瞳には怒りの熱を煮え滾らせていた。

さすがのチカコも気圧されたのか、渋々引き上げる。

だが……、


「その汚らわしい女だけは反対です! 世界中の半分の人間が、下着の中まで知っていると言うではありませんか!? わたくしの陛下が笑いものになってしまうわ! それだけは、許しませんからね」


吐き捨てるように言うと、彼女は応接室を出て行った。


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